「ヒシクイ亜種ロシアヒシクイ?」カテゴリーの投稿アーカイブ
今年はロシアン!?
投稿者: アカショウビン カテゴリー: アトリ, ソデグロヅル, タゲリ, ノスリ, ハイタカ, ハヤブサ亜種シベリアハヤブサ(旧分類), ヒシクイ亜種オオヒシクイ, ヒシクイ亜種ロシアヒシクイ?, 野鳥 投稿日: 2015年10月27日
今年もオオヒシクイが飛来しました。
(中央の嘴の模様が違うマガンより少し大きな個体です)
ガン類の中でもヒシクイは繁殖地域により亜種が異なるため、特に興味深く観察しているのですが、
今年も怪しげな個体を見つけました。
日本に飛来するのは、亜種オオヒシクイ、亜種ヒシクイ、亜種ヒメヒシクイの三種とされていますが、
これらはいずれも、ウラル山脈より東側で繁殖するアジア系の個体群です。
今回見つけた個体は、嘴のオレンジ色の範囲が広く、ウラル山脈より西で繁殖するヨーロッパ系の個体群の特徴に一致します。
昨年までも、ヨーロッパ系と思われる個体が毎年飛来していて、
私はおそらく亜種ニシヒシクイだろうと考えていますが、下の写真のように今回より明らかに嘴が長い個体でした。
(2013年2月撮影のニシヒシクイと思われる個体)
嘴が長い個体は比較的南のタイガ地域で繁殖する個体で、アジア系では亜種オオヒシクイに対応します。
一方嘴の短い個体はより北のツンドラ地域で繁殖し、アジア系では亜種ヒシクイ、
ヨーロッパ系では亜種ロシアヒシクイとなります。
今回見つけた個体はおそらく亜種ロシアヒシクイではないかと考えていますが、
もちろん現段階では両亜種とも日本の野鳥としての分類には含まれていない鳥さんです。
ヒシクイの亜種は、もう一種グリーンランドなどで繁殖する亜種コザクラバシガンというのがいますが、
さすがに日本で観察できる可能性は極めて低いでしょう。
ここまで、ヒシクイの亜種について説明したついでなので、
当地に飛来するのヒシクイについてもう少し掘り下げてみたいと思います。
私は当地に飛来するヒシクイの代表的なものは、便宜的に亜種オオヒシクイと分類していますが、
実はこれは正しくありません。
近年のDNA鑑定の結果から、当地に飛来するヒシクイは亜種オオヒシクイでも亜種ヒシクイでもないことがわかっています。
5年前に初めて行われた渡りの調査では、中国のハンカ湖へ到達したことが確認されており、
北海道・東北地方で越冬する個体がロシア・カムチャツカ半島へ渡るのとは全く異なっています。
実際に調査された方からもお話を伺ったことがありますが、今後新亜種として分類される可能性があるとのことでした。
私を含めて当地でヒシクイを見たことのある人は、
図鑑と見比べると中途半端で、亜種オオヒシクイなのか亜種ヒシクイなのか判断に迷った経験があると思いますが、
実は両種の中間的な特徴を持っていることが原因だったのです。
ヒシクイはガンカモ類の中では特別に亜種が多く、
様々な調査研究によっては今後の分類が大きく変わるかもしれない大注目の鳥さんだと思います。
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今年は数がとても少ないアトリです。